申告期限の注意点
- 確定申告書の提出期間は、原則、毎年2月16日~3月15日までの1か月間です。
- ※2020年は新型コロナウイルスの影響で、申告期限が4月16日(木)まで延長されました。
- 同様に2021年も申告期限が延長される可能性があります。
この記事で解決できる悩み
- FXの確定申告の書き方がわからない
- 利益が少なくても申告は必要なの?
- スマホでも確定申告できるの?
この記事では、このような悩みや疑問について、解決するための解説をしています。
のちほど解説する「確定申告書の書き方:手書きに必要な書き方6つ」を理解して実践すれば、手書きでもスマホでも迷うことなく確定申告書を書くことができますよ。
FX取引は原則として確定申告が必要
FXの利益は先物取引等に係る雑所得に区分され、1年間に一定額を超える利益が出ると確定申告の義務が発生します。

ですから、1年間の損益がプラスマイナスどちらに終わっても確定申告をしましょう!
FX取引をして確定申告がいらない人
FXで利益が出ても、以下を満たす場合は確定申告の義務はありません。
それぞれのケースを詳しくみていきましょう。
確定申告が不要なケース
- サラリーマンは20万円以下
- 専業主婦・パートなし学生は48万円以下
サラリーマンは20万円以下
サラリーマンなどの給与所得者は、FXの利益が年間20万円以下なら確定申告は不要です。
ただし、給与が年間2,000万円以上の場合は、FXの利益の有無に関係なく確定申告が必要なので、気をつけてください。
サラリーマンがFXで陥りがちな失敗については以下の記事で詳しく解説していますよ!
専業主婦・パートなし学生は48万円以下
専業主婦や学生は、FXの年間利益が48万円以下なら確定申告は不要となります。

ちなみに2020年分の確定申告から、所得金額から差し引ける基礎控除が48万円(2019年分までは38万円)に増えました。
家事や育児と両立しながらFXで稼ぎたい主婦の方は、以下の記事も参考にしてください。
FX取引で負けても確定申告は必要?
年間の損益がマイナスに終わっても、確定申告はすべきです。
損失が出た翌年以降3年間にわたって繰越控除の適用を受けて、将来の利益と相殺して節税できるからです。
また、もしFX以外に先物CFD取引やバイナリーオプションといったほかの申告分離課税の雑所得があれば、損益通算できます。
FXで損失を出しても、他の雑所得で利益を出しているなら、損益を相殺することで節税になりますよ。
FXにかかった経費の計上で節税できる
所得税法上、FX取引をする際に必要になった費用は、経費計上することでFXの利益から差し引けます。

ただしFXに直接関係のない費用は経費として認められないので、迷ったときは税務署や税理士に相談しましょう!
税率は申告分離課税の20.315%
個人のFXトレーダーは、給与や不動産収入などのほかの所得と分けて、一律20.315%の税率で申告分離課税されます。
たとえば100万円の利益なら203,150円です。
ちなみに20.315%の内訳は、以下のように所得税、住民税、復興特別所得税となっています。
申告分離課税の内訳
- 所得税:15%
- 住民税:5%
- 復興特別所得税:0.315%
手書きで確定申告書を作る場合は、それぞれの税金を分けて計算する必要があるので、頭の隅においておきましょう。
一方、ネット環境から申請すれば、自動計算されるので手続きが楽です。
確定申告で必要な準備5ステップ
次に確定申告をするための事前準備を5ステップで詳しくみていきましょう!
確定申告で必要な準備5ステップ
- 確定申告書
- 年間損益報告書
- 源泉徴収票
- マイナンバーカード
- e-Taxを登録する
準備1:確定申告書を準備する2つの方法
確定申告書は、パソコンあるいはスマホのネット環境から作成する方法と、手書きで作成する方法があります。
それぞれの記入方法について簡単に解説しますね。
準備1:確定申告書を準備する2つの方法
- パソコンやスマホの場合
- 手書きの場合
記入方法1:パソコンやスマホの場合
パソコンやスマホで確定申告書を作成するには、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」を利用しましょう。

また、画面の指示にしたがって、所定の入力欄に必要な情報を入力するだけで自動計算されます。
このようにパソコンやスマホなら、簡単に確定申告書を作れることがメリットです!
記入方法2:手書きの場合
確定申告書を手書きする場合は、用紙の準備をしなくてはなりません。
国税庁ホームページからダウンロード・印刷するか、税務署や確定申告会場などで入手しましょう。

計算の間違いや誤記に充分に注意して、確定申告書を作成しましょう。
準備2:年間損益報告書
FXで年間いくらの損益が出たかを示す書類として、年間損益報告書が必要です。
利用しているFX会社の取引画面等から閲覧できます。

税務署から金額の算定根拠を求められた際の証明にもなるので、なるべく紙に印刷して保管しておきましょう。
準備3:源泉徴収票
年末調整ずみのサラリーマンやパート・アルバイトをしている方は、勤務先から1月頃に渡される「源泉徴収票」の記載内容を確定申告書に記入する必要があります。
ちなみに2019年分までは確定申告書に源泉徴収票の添付義務がありましたが、2020年分から添付義務は廃止されました。
とはいえ、自分の年収を示す大切な書類であることに変わりはないので、捨てずに大切に保管してくださいね。
準備4:マイナンバーカード
マイナンバーカードがあると、e-Tax(イータックス)の登録が簡単になったり、確定申告書を提出する際の本人確認がスムーズになります。
自治体にもよりますが、マイナンバーカードの申請をしてから交付されるまでに数週間かかる場合もあるので、早めに申し込んでおくのがポイントです!
準備5:e-Taxを登録する
e-Taxを使えば確定申告書類をデータで送信できるので、税務署に出向いたり書類を郵送する手間が省けます。
e-Taxに登録する際、マイナンバーカードを持っていない人は税務署で登録(ID・パスワード方式)しましょう。
マイナンバーカードを持っていてパソコンから登録する場合は、ICカードリーダーが必要(2020年分のe-Taxから不要の見込みですが未確定)です。

【確定申告書の書き方①】手書きに必要な6つの書類の書き方
手書きで確定申告書を作成する場合に必要な6つの書類の書き方を順に解説しますね。
以下では、給与収入があり特別な控除がないケースを想定しています。
【確定申告書の書き方①】手書きに必要な6つの書類の書き方
- 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書4つの事項
- 確定申告書Bの第二表2つの事項
- 確定申告書B 第一表の左側だけ記入する
- 確定申告書(分離課税用)第三表の3つの事項
- 第一表に戻って最終税額を計算する
- 損失の場合は「先物取引に係る繰越損失用」を記入する
書き方1:先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書4つの事項
まずはFXの取引内容に関する計算明細書の書き方です。
確定申告を行う年分を記載し、事業所得、譲渡所得、雑所得のうち「雑所得」に〇をつけるとともに、氏名を記入します。
FXの取引内容に関する計算明細書の書き方
- 取引の内容を記入
- 総収入金額を記入
- 必要経費等を記入
- 所得金額を記入
事項1:取引の内容を記入
「種類」欄には「為替証拠金」、「決済の方法」欄には「仕切」と記入します。
事項2:総収入金額を記入
年間取引報告書の損益合計金額を、「差金等決済に係る利益又は損失の額」Ⓐ欄と合計欄に記入します。
事項3:必要経費等を記入
FX取引にかかった必要経費を記入してください。
取引手数料や消費税、取引用のスマホやパソコンの購入代金・利用料金、FXに関する書籍や情報誌の購読料などが必要経費に該当します。
FXとは関係のない費用は計上できないので注意してくださいね。
事項4:所得金額を記入
最後に総収入金額ー必要経費等を計算し、所得金額を記入します。

書き方2:確定申告書Bの第二表2つの事項
つぎに源泉徴収票を見ながら、確定申告書第二表を記入します。
ほかの所得がなければ記入する必要はありませんが、住所・氏名欄は必ず記入してくださいね!
確定申告書Bの第二表2つの事項
- 所得の内訳を記入
- 社会保険料控除を記入
事項1:所得の内訳を記入
所得の内訳欄には「給与」、給与支払者欄に会社名、収入金額欄に源泉徴収票の金額を記入してください。
合計金額の記入漏れが多いので気をつけましょう。
事項2:社会保険控除額を記入
第二表の右側の社会保険料控除欄に、源泉徴収票から金額を転載します。

ここでも合計金額を忘れないよう注意です。
書き方3:確定申告書B 第一表の左側だけ記入する
まず第一表の左側のみを記入して、第三表に続きます。
具体的な記入手順は以下のとおりです。
なお、給与所得控除後の金額については、国税庁ホームページを参考に計算してください。
確定申告書B 第一表の左側のみ記入
- 住所・氏名を記入
- 第二表の左側に記載した給与の金額を、収入金額等の「給与(カ)」に記入
- 国税庁の資料から所得金額を算出して「給与⑥」「合計⑫」に記入
- 第二表の右側に記載した控除金額と追加がある控除の合計金額を「合計㉙」に記入
書き方4:確定申告書(分離課税用)第三表の3つの事項
先物取引の計算明細書に記入した内容にもとづいて、税額を計算する用紙です。
住所・氏名のほか、以下3つの事項を記入する必要があります。
確定申告書(分離課税用)第三表の3つの事項
- 先物取引の金額を記入
- 第一表の金額を左側の税金の計算へ記入
- 課税される所得金額から税額を計算し右側へ記入
事項1:先物取引の金額を記入
先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書に記入した収入金額と所得金額の合計を使います。
計算書④の合計を第三表の「先物取引(ナ)」へ記入するとももに、計算書⑫の合計を第三表の「先物取引(72)」へ記入しましょう。
事項2:第一表の金額を左側の税金の計算へ記入
次は、第一表で記載した内容を、第三表の左側の税金の計算「課税される所得金額」へ記入するステップです。
具体的には以下のとおりです。
第一表の金額を左側の税金の計算へ記入
- 第一表の所得金額等「合計⑫」を第三表の税金の計算⑫へ転載
- 第一表の所得から差し引かれる金額「合計㉙」を第三表の税金の計算㉙へ転載
- 転載した⑫から㉙を引いた金額を税金の計算「⑫対応分(75)」へ記入
- 第三表の「先物取引(72)」へ記入した数字を「(72)対応分(80)」へ記入
事項3:課税される所得金額から税額を計算し右側へ記入
上記「事項2」で入力した金額を計算して、右側の税金の計算へ記入するステップです。
課税される所得金額から税額を計算し右側へ記入
- 所得税の速算表を使って「⑫対応分(75)」の金額を計算し「(75)対応分(83)」へ記入
- 「(72)対応分(80)」に記入した金額に申告分離課税で説明した15%(所得税)を掛けた数字を記入
- 合計を記入
具体的な数字を使って計算してみますね。
参考例
- 【(70)が200万だった場合】
- 【(80)が100万円だった場合】
- 「(83)と(88)を足した金額を(91)へ記入する」
・200万×10%ー97,500=102,500
・102,500を「(75)対応分(83)」へ記入
・100万円×15%=150,000
・150,000を「(80)対応分(88)」へ記入
書き方5:第一表に戻って最終税額を計算する
残りの第一表の右側を埋めていき、最終的な税額を計算すれば確定申告書の記入は完了です。

第一表に戻って最終税額を計算する
- 第三表の税額を転載する
- 復興特別所得税を計算する
- 源泉徴収額を入力し最終税額を出す
事項1:第三表の税額を転載する
まずは第三表で計算した(91)の金額を第一表へ転載するために、第一表の㉛と㊶と㊸に記入してください。
なお、㉛の金額には所得も含まれているので、㉚は記入しないてOKです。
事項2:復興特別所得税を計算する
(43)の数字に2.1%をかけて復興特別所得税を算出します。
(43)の金額は所得税15%分なので、15%×2.1%で0.315%になるわけです。
(43)に2.1%をかけた数字を(44)へ記入し、(43)と足した数字を(45)へ記入します。
事項3:源泉徴収額を入力し最終税額を出す
源泉徴収票に記載された源泉徴収額を(48)へ記入し、(45)から引けば最終的な税額が計算できます。
FXの損益がプラスなら最終的な税額はプラスになり、FXの損益がゼロあるいはマイナスなら最終的な税額はゼロになりますよ。
書き方6:損失の場合は「先物取引に係る繰越損失用」を記入する
FXの損失を翌年以降3年にわたって繰り越すために提出する書類です。

①欄に今年の損失である30万円を「△(マイナス)」つきで記入します。
①と同じ金額を、④、⑧、⑫へ記入します。
㉒と㉖には、⑫の金額の△を外して記入します。
㉖には、⑦、⑪、㉒の合計金額を記入します。
なお、このケースでは⑦、⑪は空欄になるので、㉒の金額をそのまま記入します。
【確定申告書の書き方②】:Webで作成する2つの方法
スマホやパソコンを使えば簡単に確定申告書を作成できますよ。

手書きのように計算誤りのリスクがないので安心ですね!
方法1:パソコンは手書きと同じ様式できる
パソコンで確定申告書を作成する場合は、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」から進みましょう。
画面上で入力する数字は手書きと同じです。
パソコン用のオリジナル画面と、手書きと同じフォーマットのどちらでも入力できるので、入力しやすい形式を選びましょう。

方法2:スマホは画面どおりに進めるだけ
スマホの場合は、画面の流れに沿って入力するだけで簡単に確定申告書が作成できます。
ちなみに入り口は、パソコンと同じく国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」です。
入力の仕方で迷ったときは、手書きの項目を参照すれば大丈夫ですよ。
FXで確定申告書を提出する際の注意点2つ
FXの申告をする際は以下2つに注意が必要です。
とくに期限を過ぎて確定申告をすると、加算税や延滞税といったペナルティが課されるおそれがあります!
FXで確定申告書を提出する際の注意点
- 提出方法は3種類ある
- 確定申告の期間
注意点1:提出方法は3種類ある
確定申告書は以下3つの方法で提出することができます。
それぞれのメリット・デメリットを簡単に紹介しますね!
3種類の提出方法
- 窓口で提出する
- 郵送で提出する
- e-Taxで提出する
方法1:窓口で提出する
確定申告書を手書きあるいはパソコンで作って、税務署などの窓口で提出する方法です。
内容に不備がないかチェックしてもらえますし、控えを持っていけば控えにも受付印を押してもらえます。
ただし、混雑により提出までに時間がかかるのがデメリットです。
方法2:郵送で提出する
手書きあるいはパソコンで印刷した確定申告書を郵便で出す方法です。
税務署に行く手間が省けますが、内容の不備をチェックしてもらえないのがデメリットといえます。
方法3:e-Taxで提出する
スマホやパソコンで作った確定申告書は、e-Tax(電子申告)により提出することができます。
24時間いつでも提出できるので、自分の都合にあわせて確定申告ができますし、青色申告者の場合は10万円の「青色申告特別控除」も受けられます。

注意点2:確定申告の期間
確定申告の期間は毎年2月16日〜3月15日(両日が土日祝日の場合は後ろ倒し)です。
この期間内に申告と納税をすませないと、加算税や延滞税といった追加の税金がかかるおそれがあります。

期間ぎりぎりから動くと、スムーズに手続きができなかったときに間に合わなくなるので、期間内に手続きを終えられるよう計画的に動きましょう!
なお、2020年は新型コロナウイルスの影響で、申告期限が4月16日(木)まで延長されました。
同様に2021年も申告期限が延長される可能性があります。
FXの確定申告の書き方 まとめ
この記事で重要な「【確定申告書の書き方①】手書きに必要な6つの書類の書き方」について再度確認しましょう。
【確定申告書の書き方①】手書きに必要な6つの書類の書き方
- 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書4つの事項
- 確定申告書Bの第二表2つの事項
- 確定申告書B 第一表の左側だけ記入する
- 確定申告書(分離課税用)第三表の3つの事項
- 第一表に戻って最終税額を計算する
- 損失の場合は「先物取引に係る繰越損失用」を記入する
これらの確定申告書の書き方を理解して実践すれば、スムーズに確定申告の手続きを進められますよ。
また、手書きの申告だけでなく、スマホやパソコンで申告するときも活用できますよ。